注文住宅を楽しみながら学ぶ
取材時は三十二歳、独身。
男性一人暮らしの家である。
十五坪弱の土地に、延べ床面積八四・二平米の三階建て。
私鉄駅から歩いて十分ほど。
商店街のすぐ近くにある。
一区画を五分割し、建築条件付で売られた土地に建てた。
中央の空間を囲むようにロの字型に建っている五軒のうちの一軒。
五軒とも同じ施工会社だが、外壁デザインも内装も選択の幅が広かったせいか、それぞれに個性のある家である。
見ようによっては、まとまりがないといってもいい。
Tさんの家はクリームイエローの外壁のシンプルな外観である。
左隣にはグレーの外壁に黒い屋根の家。
右隣には、ピンクの壁に赤いレンガがはめこまれ、白い窓枠にレースのカーテンがゆれる派手な家。
その二軒にはさまれて、なんだか無愛想なそっけなささえ感じさせる。
ほかの家はどこも家族持ちらしく、玄関脇の駐車スペースに三輪車や子どものおもちゃが転がっている。
玄関前に植木鉢を並べている家も多い。
それに比べると、Tさんの家の玄関前はきれいに掃除はしてあるが、飾り気がない。
「一人暮らしですから、周囲の家には気を使っていますよ。
周囲と生活時間帯がずれていて、夜中の三時、四時まで電気をつけていますしね。
だから近所の人と顔を合わせたら、できるだけ愛想よくこちらから挨拶するようにしています。
隣の家には小さな女の子がいるので、最初はとても不安げにこちらを見てたかな」とTさんは苦笑する。
だが近所の視線のわずらわしさなど些細なこと。
Tさんは一戸建てでの一人暮らしを満喫している。
「休日はどこにも出かけないで、一日家の中ですごしても退屈しません」と顔をほころばせた。
一戸建てまでのサイコロのふりかた住居の変遷はすごろくに似ている。
親元を離れて一人で暮らしはじめたところとすると、就職、転勤、結婚、子どもが生まれる、親との同居、定年、引退、といった節目でサイコロをふるチャンスが訪れ、駒が動いていく。
それがこれまでの通常の住宅すごろくのパターンだった。
だが、Tさんのこれまで住んできた家の話を聞くと、サイコロをふるチャンスは必ずしも外的要因で起こる「人生の節目」だけではないとわかる。
九州で生まれ育ったTさんは、愛知の大学に進学して、十八歳のときにはじめての一人暮らしをはじめた。
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